「没後160年記念 歌川広重」(2018年9月1~10月28日)を太田記念美術館で見てきました。感想などを紹介します。

没後160年記念 歌川広重

213点の広重の作品を、前期と後期に分けて半分ずつ展示しています。風景画、花鳥画、美人画など幅広い作品を見ることができます。

展示会概要
場所:太田記念美術館
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-10-10
前期:9月1日(土)~24日(月祝)
後期:9月29日(土)~10月28日(日)
料金:一般1,000円
アクセス:JR原宿駅表参道口より徒歩5分 アクセス詳細
公式HP:没後160年記念 歌川広重

太田記念美術館は、JR原宿駅を出て表参道を進み、ソフトバンクのお店の角を左に曲がってすぐ左手にあります。駅からは歩いて5分ほどです。

展示は地下1階、1階、2階の3フロアあります。1階の展示スペースの一部に土足禁止の箇所があるので、脱ぎやすい靴で行くとよいと思います。館内は全点撮影禁止です。展示数が100点ほどあり、作品がどれも細かいので1時間半ほどあるとじっくりみることができます。

風景画

私は日本の街並みや自然と人物を細かく描いた版画がとても好きです。特に今回気に入ったのは、雨を描いた版画です。雨と橋の幾何学的で美しい構図と、その中にいる人間味あふれた人物の姿がとてもおもしろく感じました。雨の音を背景にして橋の上の人たちの声が聞こえてきそうです。

歌川広重 ≪名所江戸百景 大はしあたけの夕立≫ 太田記念美術館蔵(引用:太田記念美術館HP

また、広重の風景画は、小さいながら人物がそれぞれ個性をもって生き生きと描かれているところが好きです。表情やしぐさも一人ひとり異なり、その存在がとても身近に感じられます。目や口はほとんど点のような描写なのですが、それでも不思議とその人の個性が現れています。一つ一つの表情や所作を見ていると飽きません。広重は、人の日々の営みを愛情をもって観察していたのではないかと思います。

歌川広重 ≪東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景≫ 太田記念美術館蔵(ポストカード より)

美人画

美人画は、着ている着物の柄や色合いに興味を惹かれました。美人画に描かれた女性たちは何枚も重ねられた着物をたっぷりと着ており、柄も幾何学的なものから花や鳥を描いたものまで、とても細やかに表現されていました。その丸みを帯びたやわらかい女性たちのシルエットが、建物や自然の木々などのまっすぐと整然とした描写の中でより際立っているように感じました。着物の色合いはきっと、160年前に描かれた直後はもっと鮮やかで華やかなに表現されていたのではないかと思います。

歌川広重 ≪雪月花の内 月の夕部≫ 太田記念美術館蔵(引用:太田記念美術館HP

花鳥画

広重の花鳥画は今回初めて見ることができました。花鳥画で描かれた花には、よく見ると花びらに凹凸が加えられているものもありました。一見わからないのですが、広重がとても細かいところにまで工夫を凝らしていたことが感じられます。

花鳥画はその構図も面白く感じました。≪月に雁≫では、半分だけ描いたまん丸い満月がとても大胆です。鳥の動きの向きと背景の雲の形もどこかリンクしているように感じられます。実際にこういう景色を見て描いたとはちょっと考えにくいので、広重のセンスがまるで近代のポスターのような新しい視点をもっていたように想像します。

歌川広重 ≪月に雁≫ 太田記念美術館蔵(引用:太田記念美術館HP

国貞との合作

地下1階の展示で、歌川広重と歌川国貞の合作が複数展示されていました。広重が背景の景色を担当し、国貞がメインの人物を描いたものです。一見すると2人で書いたことがまったくわからないくらい、1枚の完成された絵になっていると感じました。展示の解説によると、「広重は、国貞の描く人物の邪魔にならないように風景を描いた」という内容のことが書かれており、なるほどと思いました。2人の合作は見事な調和だと思いました。

歌川広重(1797~1858)と歌川国貞(1786~1864)は、ともに同じ時代を生きた人気絵師です。広重は国貞より年下ですが、国貞よりも先に亡くなりました。広重が亡くなったのちに、国貞は広重の肖像画を描いています。今回の展示の最後(地下1階展示室の最後の展示)は、この広重の肖像画です。そこにはきっと、共に合作を描いた広重への敬意が表れているのだと思います。

展示はいたってシンプルな構成なのですが、さいごの展示を見たときに、広重の人生をほんの少したどることができたような気持ちになりました。