山種美術館の企画展「日本美術院創立120年記念 日本画の挑戦者たち ―大観・春草・古径・御舟―」を先週末に見てきました。感想などをご紹介します。

企画展「日本美術院創立120年記念 日本画の挑戦者たち」の概要

日時:2018年9月15日(土)~11月11日(日)
場所:山種美術館 〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
料金:一般1,000円
アクセス:恵比寿駅より徒歩約10分 詳細はこちら
公式ホームページはこちら

山種美術館は恵比寿駅から歩いて10分くらいです。途中で歩道橋をわたるのと少し坂道なので駅からはやや遠く感じます。

山種美術館は日本画を専門とした美術館で、常設展はないのですが年に5回ほどの企画展をおこなっており、所蔵品の一部をみることができます。展示室は地下1階のみで、今回の企画展は50点ほどでした。

休日のお昼ごろに行きましたが、一点ずつじっくり見ることができる空き具合でした。展示スペースは広くありませんが、ふらっと立ち寄るのにちょうどよいサイズの美術館です。

名樹散椿の展示替えに注意

重要文化財の速水御舟《名樹散椿》は展示替えのため、10月16日~11月11日のみの展示です。私は把握していなかったため、見当たらないなぁと思いながら鑑賞してしまいました。全ての作品リストはこちらから確認できます。

速水御舟《名樹散椿》山種美術館蔵 ※重要文化財
(引用元:山種美術館HP

菱田春草

私は菱田春草(1874年-1911年)が特に好きなので、今回もこちらの展示を目的に行きました。今回は菱田春草は4点の展示がありました。そのうちの2枚は牧童を描いた《初夏(牧童) 》と《月下牧童》です。《月下牧童》は今回の全体の展示の中でも一番好きでした。人気投票(企画展の中で一番好きな作品を投票するもの)でもこちらに投票しました。

画像で見ると、なんだか地味でぼんやりした印象があるのですが、実物は透明感がありとても繊細で神々しく感じます。人間が描いたものとは思えない美しさを感じます。本当に不思議です。

菱田春草《月下牧童》山種美術館蔵
(引用元:山種美術館HP

菱田春草《初夏(牧童)》山種美術館蔵
(引用元:山種美術館ポストカードより)

菱田春草の残りの2枚は《雨後》と《森の夕》の風景画でした。特に、《雨後》だったと思うのですが、全体がかなりぼんやりと霧がたちこめているような独特な作品でした。美術館の展示解説によると、この色彩などをぼかして描く手法の「朦朧体」は当初はかなり批判を浴びたようです。私はこの儚げな雰囲気は日本らしく感じられてとても好きです。こうして今展示を見られるのは、批判にめげず新しい技術を確立していった画家達のおかげだなとありがたく感じます。

速水御舟

山種美術館は速水御舟(1894年~1935年)の貯蔵が多くあり、今回の展示でも8点見ることができました(一部は展示替えがあります)。山種美術館は館内撮影禁止なのですが、今回の展示では御舟の《昆虫二題 葉蔭魔手・粧蛾舞戯》のみ撮影がOKとなっていました。

速水御舟《昆虫二題 粧蛾舞戯・葉蔭魔手》山種美術館蔵

速水御舟《昆虫二題 粧蛾舞戯》山種美術館蔵

こちらは蛾と蜘蛛を描いた作品です。《葉蔭魔手》は、写真だとガラスに反射して蜘蛛はほとんど見えませんが中心に蜘蛛が描かれています。主題の蜘蛛よりも鮮やかな緑色の葉のほうが印象的です。《粧蛾舞戯》は渦巻きに平面的な蛾が吸い込まれていくようです。実物の発色も写真とほぼ同じで鮮やかでした。

速水御舟の展示の中で今回最も気になったのは、《牡丹花(墨牡丹)》です。実物は花びら一つひとつに墨で陰影が入れられています。ほとんど黒と緑色で書かれていますが、モノクロではないので黒い花びらがいっそう際立って見えました。御舟がなぜ花びらを墨で描こうと思ったのか、とても不思議に感じました。

速水御舟《牡丹花(墨牡丹)》山種美術館蔵(引用元:山種美術館ポストカード)

戦後の日本美術院

1945年以降~現代に描かれた日本画が30点ほど展示されていました。1900年代前半~戦前の作品群と雰囲気ががらっと変わります。日本画という型が突然無くなったように感じました。その中でも特に印象に残った作品がいくつかありました。

片岡球子(1905年~2008年)の作品は今回初めて見ました。これまで見た近代の日本画のような、繊細で緻密でどこか密やかというスタイルではなく、ダイナミックでエネルギーに溢れた大胆な作品でした。細部まで見ると、輪郭の線は歪んだり、太くなったり細くなったり、少し途切れていたりと、あまり緻密に描いたようには見えません。その代わり、勢いや生命力といった強さを感じます。こういう種類の日本画もあるのだなと勉強になりました。

個人的な好みは、春草や玉堂のような色使いはごく控えめで繊細な絵が好きなのですが、この片岡球子の絵はとても印象に残りました。片岡球子の別の絵も見てみたいです。

片岡球子《北斎の娘おゑい》山種美術館蔵
(引用元:山種美術館HP

田渕俊夫(1941年~)の《輪中の村》は、戦後の作品の展示の中で一番好きでした。戦前までの日本画の雰囲気を受け継いでいるように感じました。画材のためだと思うのですが、アイシャドウのようにきらきらと光っている色も使われていました。

田渕俊夫 《輪中の村》山種美術館蔵
(引用元:山種美術館HP

この作品は、薄暗い絵の中にとても鮮やかな緑色を使っているところも日本画らしいなと思いました。私は日本画に使われる緑色はとても独特な色だなといつも感じるのですが、この絵の緑色も同じように印象に残りました。この全体のほの暗さの中に、明るいのっぺりとした緑色を使うのはなぜなのでしょう。とても不思議で興味深いです。田渕俊夫も他の作品を見てみたいです。