京都国立近代美術館で開催中の『生誕110年 東山魁夷展』を見てきました。作品はどれも想像以上に素晴らしかったです。

京都では2018年8月29日~10月8日(京都国立新美術館)、東京では2018年10月24日~12月3日(国立新美術館)に開催予定です。京都展はもうすぐ終わりですが、これから東京展へと続くのでぜひたくさんの人に訪れてほしいです。

東山魁夷展 概要

京都展の後に東京展があり、あわせて3か月間以上の開催です。
公式ホームページはこちらです。

京都展

会期:2018年8月29日~10月8日
場所:京都国立近代美術館 〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町26-1
出品リスト:京都展作品リスト(PDF)
アクセス:京都駅前からバスで約20~30分 市バス100番(急行)清水寺・銀閣寺行「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ 詳細はこちら

金曜日の夕方に京都駅からバスで行きましたが、観光客などでバスはとても混んでいました。道も混んでいたので、時間には少し余裕をもつとよいと思います。バス停「岡崎公園 美術館・平安神宮前」で降りると、左手にすぐ美術館があります。また、正面に大きい朱色の鳥居が見えました。

京都国立近代美術館 バス停前

私は金曜日の17時半訪れましたがチケットはすぐに購入できました。作品もひとつずつじっくり鑑賞できたので、夕方の時間帯はおすすめです。金曜日と土曜日は夜9時まで開館しているのもありがたいです。

東京展

会期:2018年10月24日~12月3日
場所:国立新美術館 〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
アクセス:乃木坂駅 6出口直結 詳細はこちら

展示の概要

以下は京都展での展示を鑑賞した内容を元に記載します。東京展は少し内容が異なるかもしれませんが、展示は概ね同じだと思います。

展示は東山魁夷(1908年-1999年)の生涯をたどりながら、各年代で描いたテーマごとに構成されていました。テーマはそれぞれとてもわかりやすく、また生涯をたどる展示は魁夷を理解するうえでもとても勉強になりました。

構成は以下の6章構成でした。日本、北欧、京都、ドイツ・オーストリア、そして晩年の風景画へ……という流れです。特に、5章、6章では大作の障壁画と風景画が続きます。

・第1章 国民的風景画家(1947~1961年、39~53歳)
・第2章 北欧を描く(1962~1965年、54~57歳)
・第3章 古都を描く・京都(1968~1973年、60~65歳)
・第4章 古都を描く・ドイツ、オーストリア(1971年、63歳)
・第5章 唐招提寺御影堂障壁画(1972~1982年、67~74歳)
・第6章 心を写す風景画(1980~1999年、90歳)

90歳で亡くなるまで、戦後からずっと描き続けたことがわかります。特に印象に残った作品について、以下に紹介します。

北欧を描いた作品

魁夷は新たな風景を求めて北欧へ旅に出ました。私は北欧に行ったことはありませんが、静かで厳かな自然の様子が絵から感じられました。

各作品はサイズも大きく迫力がありましたが、一方で細部までとても丁寧に描かれていました。特に《冬華》は印象に残りました。木の枝のひとつ一つが繊細に描かれており、とても壮大な作品でした。青白い木と月は、現実のものというより絵本の物語に出てきそうな不思議な雰囲気です。自然のやさしさや雄大さも感じますが、その厳しさや神秘性の方がより際立って伝わってきました。このどこか儚く厳かな雰囲気は、日本人の自然観によく合うように思います。

東山魁夷《冬華》国立近代美術館蔵
(引用元:京都展HP

ドイツ、オーストリアを描いた作品

私はドイツ、オーストリアは滞在や旅行をしたことがあるのですが、その街並みを描いた作品はどこか懐かしく感じました。

《古都望遠》は、中心に高い塔の教会が描かれています。実際の絵をみると、この教会の存在感はとても大きく、絵の中で浮かび上がっているように見えました。教会は周囲に描かれた家や木々よりも輪郭がはっきりと感じられます。ドイツやオーストリアでは町のいたるところに教会がありますが、この絵はそれを美しく引き立てているように感じました。

東山魁夷《古都望遠》個人蔵(引用元:京都展HP

他にも全体が青味がかったドイツの街並みなどが描かれており、魁夷ならではの作品を感じることができました。

唐招提寺障壁画

今回の展示の中でも一番の大作は、唐招提寺障壁画です。展示スペースに入ったときは、絵の大きさと美しさに驚きました。

《山雲》は山を描いた作品ですが、主役は雲という印象を受けました。いったいどうやって雲を描いているんだろう、と不思議に感じました。山並みに沿った雲はとても日本を感じさせます。緑豊かな山並みのある風景は日本人にはとても馴染みのあるものですが、日本ならではの美しさだと思います。ドイツやオーストリアではこうした山並みは見たことがありません。逆に、私は外国でも山並みを見ると日本風だなと懐かしくなります。スイスから見えるアルプスの山並みなどは、日本を懐かしく感じさせます。

東山魁夷《山雲》(部分)唐招提寺障壁画
(引用元:京都展HP

《濤声》に描かれた海は、まるでコンピュータグラフィックのような、日本画というよりも近代的で動きのある絵だと感じました。青い波間に使われている白が美しく立体的で、古さやなつかしさというより、新しさや未来性を感じました。魁夷はこれらの絵を描くために、改めて日本中の景色を観察して周ったようなのですが、絵に新鮮さが加わったように感じます。60歳を過ぎても探求を続けた魁夷の情熱が感じられます。

東山魁夷《濤声》(部分)唐招提寺障壁画
(引用元:京都展HP

また魁夷は、唐招提寺障壁画のために水墨画も描いています。驚くべきことに、魁夷はこの時初めて水墨画に挑戦したという解説がありました。こちらの水墨画も大作で、初めての水墨画とは信じがたく思いました。魁夷は90歳で老衰で亡くなりましたが、死ぬ間際まで探求や成長を続けた人なのではないかと、改めてその情熱や努力に感動しました。

晩年の作品

魁夷は生涯の画家人生で風景を中心に描いてきました。人物や動物などはほぼ描かれていません。ただ、晩年は絵の中に「白馬」を描いています。私はこの白馬の存在意味はあまりよくわからなかったのですが、神秘的な風景画がさらに幻想的に、不思議な世界に昇華されたように感じました。本展示でも、晩年に描かれた白馬の絵を多数見ることができました。

晩年の作品は、絵のサイズも大きくどれも繊細で迫力がありました。私が最も印象に残ったのは、最後の展示で絶筆の《夕星》です。

東山魁夷《夕星》(絶筆)長野県信濃美術館蔵
(引用元:長野県信濃美術館HP

 
中心には4本の木があり、画面のほぼ中心で水面に反射した鏡像が描かれ、空に星がひとつあります。幻想的で不思議な景色ですが、最後の作品にとてもふさわしいと感じました。長野県信濃美術館の解説にはこう書かれています。

画面の上半分は、善光寺大本願花岡平霊園に生前買い求めた自身の墓所から霊山寺を望む風景によく似ています。(引用元:長野県信濃美術館HP

自らの墓所から眺めた景色を描いたというのは、人生の終わりを暗示するようです。絵そのものはとても安らかで美しいです。今までの絵で見られなかった、空に描かれた一つの星が、墓所を象徴しているのかもしれません。

おわりに

約70展の魁夷の作品を一度に見られたのはとても幸運でした。大きい作品も多いので、近くで見たり、少し離れてみたり、それぞれの作品をじっくり鑑賞できたのもとてもよかったです。想像以上に感動したので、帰りにはミュージアムショップで久しぶりに画集を買いました。ヨーロッパ旅行ぶりの画集購入です。じっくり振り返ったり、あらためて作品を見たくなったら所蔵美術館へまた足を運びたいと思います。